微生物による自己修復材料とインフラの長寿命化

自己修復材料コンクリートの研究が進んでいる。コンクリートは強度や施工性という長所とひび割れやすいという短所がある。コンクリートを自己治癒できれば、長寿命化に貢献するほか、維持管理コストを下げることができる。

バラシス属バクテリアの活性化による補修

オランダのデルフト工科大学、ヘンドリック・ヨンカース准教授が率いる研究グループはバクテリアを利用して、コンクリート材料の修復する技術を開発した

バシラス属のバクテリアは乾燥すると胞子状の殻をまとい、pH(ペーハー)が13程度と強いアルカリ性のコンクリートの中でも200年ほど生存できる。

乾燥させたバクテリアを栄養分である乳酸カルシウムと一緒に圧縮・固化。さらに生分解性プラスチックの殻で覆って、数ミリメートルのカプセル状にして、生コンクリートに所定の量で配合する。

生分解性プラスチックの殻により施工中でもバクテリアが摩擦や水から守られ、不活化状態のままコンクリートの中に取り込まれる。

生分解性プラスチックの殻は、コンクリートが硬化後、もろくなり、ひび割れが生じる。休眠していたバクテリアはこの割れ目から浸透した水と酸素で活性化する。
バクテリアは栄養分である乳酸カルシウムを分解し、二酸化炭素を排出する。結果としてセメント原料となる石灰石の主成分である炭酸カルシウムが生成され、ひび割れを埋める物質となる。

実験では最大1mm幅のひび割れを約2カ月で修復できたことを確認している。コンクリートの強度を回復させることは保証していないが、ひび割れを埋めて、水の浸入を防ぐだけでも、内部の鉄筋強度の維持に多大なメリットがある。
現状の価格は原材料を欧州から輸入するため、通常の生コンの2倍程度だが、日本国内での材料生産によりコストダウンも期待できる。

イースト菌や納豆菌による材料の補修

愛媛大学大学の研究グループでは、イースト菌や納豆菌などの微生物を含んだグラウト(隙間を埋めるための流動性を持たせた建材)で、自己修復材料の技術開発に取り組んでいる。
コンクリート構造物のひび割れ部分に、微生物とひび割れ修復に必要なカルシウム源、その微生物の栄養源を混ぜたグラウトを注入する。
微生物の活動による二酸化炭素(炭酸イオン)と、カルシウム源から生じるカルシウムイオンが反応して、ひび割れを埋める炭酸カルシウムが生成される。

愛媛大学は、およそ0.2mm幅のひび割れを持つコンクリート供試体を用いて、グラウト注入前後の透水性能を確認する試験を実施している。

栄養源は微生物に応じて変わる。納豆菌(+水酸化カルシウ)、イースト菌(+酢酸カルシウム)を用いたグラウトを双方の透水量(1週間)を調べると、前者では補修前の2割程度、後者では7割程度に減少していた。
現時点では、十分な量の炭酸カルシウムを生成するのに時間がかかり過ぎるので、実用化には、生成スピードを大幅に速めた微生物の探索やグラウト性状の改善などが必要となる。

これらの技術が発展すれば、構造物に散布しておくだけで、ひび割れを補修できる可能性がある。バクテリアを使った自己治癒コンクリートの実現は、ひび割れが起こるたびに補修を繰り返す場合と比べて、ライフサイクルコストを抑制できる。

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